Last Update 2013.3.1
       
  ●切符のメッセージ: 切符が発信する情報量は多く,当時のことを想うことができます。
1936年/昭和11年5月2日 3列車・櫻(さくら)・特別急行券


  この切符は,1936年/昭和11年5月1日,東京驛発行の3等,800kmまでの特別急行券です。
  翌日の5月2日,東京驛から3列車・第5号車の乗車を指定しています。 料金は2円です。
  3列車の列車愛称は櫻(さくら)です。 切符の表面には櫻マークの印が押されています。
  昭和11年当時,特急列車は 富士(ふじ)・櫻(さくら)・燕(つばめ)でした。

 【特急列車の創始】
  特別急行(特急)列車が設定される前,急行列車より速い列車に 最急行という種別をつけることがありました。
  1906年/明治39年,新橋-神戸間に設定された“最急行 1・2 列車”は,
  運賃以外に初めて速達サービスの料金を徴収する列車であり,現在の有料特急・急行の元祖と言われています。

  特別急行(特急)の種別を初めて用いたのは,1912年/明治45年に前述の最急行 1・2 列車を区間延長して,
  関釜連絡船を介して中国・欧州などへの国際連絡運輸の一翼を担う“大陸連絡列車”として
  新橋-下関間で運転を開始した 1・2 列車です。 
  1914年/大正3年に東京駅が開業すると,1・2 列車も東京駅始発となりました。

 【戦前の特急列車】
  昭和に入ると特急列車に愛称が付けられました。
  1929年/昭和4年 特急1・2列車に富士(ふじ),3・4列車に櫻(さくら)の愛称が付けられました。
  これが日本における列車愛称の始まりです。
  1930年/昭和5年には,東京- 神戸間に新しく,特急燕(つばめ)11・12列車の運転が開始されました。

  燕(つばめ)は超特急と呼ばれ,
  東京 - 大阪間を11時間弱で運行していた富士(ふじ)・櫻(さくら)に対し,同区間を8時間20分で結びました。
  翌年,富士(ふじ)・櫻(さくら)東京 - 大阪間を9時間前後の運行になり,約2時間短縮されました。

  1937年/昭和12年,櫻(さくら),燕(つばめ)の補完として,東京-神戸間に(かもめ)が運転を開始しました。

  戦前の特急列車は,これら4列車が東京以西(東海道線,山陽線,鹿児島線,長崎線)に設定されましたが,
  太平洋戦争の激化により,1944年/昭和19年 富士(ふじ)を最後に,特急列車は全て廃止,一旦消滅しました。


1935年/昭和10年8月18日 2列車・富士(ふじ)・特別急行券